「心をこめた贈り物」
教育・出版 秘書歴6年 K.Y.
「本社の社長室に出向してくれるかな」6年ほど前、当時の上司に突然呼ばれ、状況が掴めないままに秘書業務の引継ぎが始まりました。
のんびりと子会社の経理を担当していた私にとり、いきなりの社長秘書の仕事は、まるで別世界のようで、毎日が驚きの連続でした。
社会人としてのキャリアは長いのに、お茶ひとつ満足に出せない状態を見かねた社長から「お茶だしの指導」を直接受けたこともありました。情けないやら、悔しいやら・・・。
そんな中、社長から特に注意するように言われたのは「お祝やお礼の贈り物と手紙は心のこもったものをすぐに用意すること」でした。
今考えれば当然のことですが、当時はそのスピードについていけず、大変苦労しました。社長と関係がある方の慶事を新聞などで知ったら速やかに報告する。慶事の詳細、その方との関係(仕事上でのおつきあいなのか、個人的に親しいのか)や、その方の人となりなどを調べ、手紙の文案を作成します。贈り物の候補をいくつか選び、指示を仰ぎます。ここまでの準備は遅くても半日で整えるようにします。
手紙の内容に修正の指示があれば、すぐ対応し、社長のサインをもらい、その日のうちに投函します。贈り物も、大安に届くよう配慮しながらも、出来る限り早く先方に届くよう手配をします。文章に書くとたったこれだけのこと・・・。
ところが、慣れないうちは仕事の優先順位もおぼつかないうえ、他の業務にも振り回されながら、「ビジネス文書の書き方」なる本を引っ張り出し、あれこれ迷っているうちに時間だけが過ぎていくという状態。回を重ねて、何度か手紙の内容の修正指示を受けたり、社長が選ぶ品物を見ているうちに、少しずつ考え方や好みもわかってきました。
特に社長が大事にしていることは、相手にお届けするメッセージは、それがたとえ電報であってもありきたりのものではなく、相手の方との関係やそれまでのおつきあいの経緯を考慮し、『心のこもったものにすること』。贈り物は、実用的であるとともに、その方の趣味や嗜好にあったもので、時には流行のものも取り入れること。
「いい文章だ。よくできているな。」と一度でOKが出ると、嬉しくなり、次はもっと良い手紙を書こうと心を引き締めます。情報を手に入れるために常々心がけていることは、新聞や雑誌の記事に目を通し、こまめに記録しておくこと。贈り物選びについても同様で、季節や地元を意識した物にしたり、時計や花瓶などの新製品の情報があれば、カタログを取り寄せておきます。
あれほど苦手だった秘書の仕事に、今では楽しく取り組めるようになりました。「お祝やお礼の贈り物と手紙は、心のこもったものをすぐに用意すること」。
このことは、仕事を離れた私生活でも私の大切な財産となっています。
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