「 お礼状の重み 」 


総合科学機器メーカー 秘書歴10年 Y.H.



季節感のある道具の取り合わせや茶花を探して、ささやかなお茶会を開き、友人と楽しいひとときを過ごしました。その友人から、ご準備はさぞかし大変でしたでしょう、細やかな心遣いをありがとう、という素敵なお礼状を翌日受け取りました。このお礼状には、電話とは別の心温かな思いを抱きました。 

 社長秘書を担当して10年目の昨年、「お礼状で大失敗」をしてしまいました。
お礼状は、秘書業務の中でも責任ある大事な仕事としてとらえ、これまで多くのお礼状を心をこめて書いてきたつもりでしたのに・・・。いくら悔やんでも、過去は変えようがないので、皆さんのご参考になればと思い、お話をいたします。

 ある日のこと、社長から「今度、経営幹部のためのセミナーを開催する。講師は大手トップのS氏にお願いすることになったよ。」と指示を受けました。私は早速、先方の秘書に日時や詳細等を確認し、依頼状を作成して秘書経由で送らせて戴きました。

このセミナー開催にあたっては、プロジェクトを発足し、準備を周到に進め、順調に開催日を迎えることができました。セミナーに出席した幹部からは「S氏が当社に来てくれるとは思わなかった。ありがたい。」と、セミナー終了後のS氏の評判は上々でした。

 2週間ほどしたころ、今回のセミナーの総括責任者であるI専務から、「あなたには頼んではいないけど、S氏にはまだお礼状は出してないですよね。」と、電話がありました。
私は、専務の声に思わず「ぁハイ、私からは、お出ししておりません・・・申しわけありません、すぐにお礼状のドラフトを作成いたします。」と答えました。
なんと、自分を含め、プロジェクトのスタッフ全員がS氏へのお礼状を忘れてしまったのです。 

 このことが社長の耳に入り、「ここまで、御礼が遅れてしまっては、たった1枚のお礼状ではすまないよ。」と、社長は、プロジェクトの部長二人に注意し、同時にセミナーの成果を資料にまとめるよう指示しました。そしてまもなく、社長と二人の部長は、お礼状に資料を添えて、S氏のところへお礼とともにお詫びに行きました。S氏は「ここまでしなくてもよかったのに」とこちらの対応を察してくださった、とのことでした。

 秘書になりたてのころ、上司から、「お礼状は最低3日以内に出すように、時期を失すると意味がなくなるから、十分に注意するように」と教えられていました。何故、このような基本的な、しかし大切な、『お礼状を出すこと』を忘れてしまったのか、今悔やんでも仕方ありませんが、同じ失敗を繰り返さないために、セミナーの企画の段階で「お礼状の項目を入れておくこと」と、当たり前のことながら今一度、肝に銘じ反省をしました。 






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