『年末、お正月行事 に込められた知恵と心』


 
書籍名
『日本人のしきたり』 
著者:飯倉晴武
青春出版社(2003/1) 735円
ISBN:4-413-04046-5
http://www.seishun.co.jp/
 
こんな本
日本の年中行事、しきたりを紹介し、歴史的な由来を探る本である。もちろん、「お正月にはおせち料理を食べよう」だけで終わりではない。日本の豊かな自然と四季の中で生活し、八百万の神を大切にし、ハレとケを分けてけじめをつけていた。多忙な現代に忘れられているのは、行事ではなく、豊かな人生観そのものであることを、再発見させてくれる。

 
年末、年始の
しきたり
■除夜の鐘

「鐘を108回つくようになった2つの説があるという。ひとつは、中国の宋の時代から始まったもので、12か月と二十四節気と七十ニ候(5日を一候とした昔の暦)を合わせた数が108になるためという説。もうひとつは、人間が過去・現在・未来にわたって持つ108つの煩悩を打ち払って罪業の消滅を祈るためという説。


■初詣

新年を迎えると、各地の神社・仏閣は、初詣をする人で賑わう。本来は、氏神様にお参りするもので、一家の家長が大晦日の夜から神社に出かけて、寝ないで新年を迎えるのが習わしだった。そのころ、家族は自分たちが住んでいる地域の、氏神様を祀っている神社にお参りしていた。やがて、伊勢神宮や出雲大社など有名な神社に出かけたり、その年の干支の年神様がいる方角、つまり恵方が縁起いいということで、恵方にあたる社寺に出かけたり(=恵方参り)、初詣をするようになった。現在は、恵方参りの習慣はなくなり、明治神宮、川崎大師、住吉大社など、各地の有名社寺にお参りすることが多い。


■おせち料理

「おせち」はもともと、季節の変わり目の節句(節供 せちく)に、年神様に供えるための「お節」料理だった。やがて、大晦日の年越しのときに食べるようになり、年の節句の中でも最も重要な節句ということから、正月に限定して食べるようになった。当初は、松の内の間中食べていたが、しだいに正月三が日に食べるのが通例になっている。


おせちは供物料理であるとともに、家族の繁栄を願う縁起ものの家庭料理でもある。家族のほかに、年賀に来るお客様に出せるようにと、重箱に詰めておくのが一般的。一の重には口取り(かまぼこ・きんとん・伊達巻きなど)、ニの重には焼き物(ブリの照り焼き、イカの松風焼きなど)、三の重には煮物(レンコン、里いも、高野豆腐など)、四の重には酢の物(紅白なます、酢レンコンなど)を入れる。


■雑煮

正月になぜ、「雑」なものを食べるのか。雑煮はもともと正月用ではなく、室町時代頃の儀礼的な酒宴で出されたのが始まりである。最初に雑煮を食べて、胃を安定させて酒宴に移るという前菜だったものが、やがて正月料理になった。


雑煮は、地域によって特色がある。関西では白みそ仕立ての雑煮と、関東ではしょうゆ仕立て(すまし仕立て)の雑煮とに分かれる。中にいれる餅の形も、関西では丸餅、関東では切り餅が一般的である。
 
便利になった
ゆえに衰えた
もの

電気や天気予報などがなかった時代、人々は日常生活や季節の変わり目を、自然の中から読み取っていた。便利な世の中になったが、自然現象や万物とともに生きているという感性そのものがなくなってしまった。日本の伝統的なしきたりを思うとき、行事ではなく、行事に向けていた感性を思い出すのかもしれない。
 


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