『暇つぶしには 仕事が一番ええ』


 
書籍名
『がばいばあちゃん幸せの教え』
著者:島田洋七
ヴィレッジブックス (2007/12) 777円
ISBN:978-4-7897-3223-9
http://www.villagebooks.co.jp/
 
こんな本
「がばいばあちゃん」シリーズの新作。本書は、芸人である島田洋七が佐賀のがばいばあちゃんとの生活を通じて知った、前向きに人生を楽しむ術がまとめられている。ただの成功談ではない、人生の谷に落ち込んだときに、読んでほしい。「本当の豊かさとはお金を持っていることじゃない」という、芸人のイメージからは遠い、あたりまえのことを書いている。がばいばあちゃん流の、昭和の豊かな生き方がぎっしり詰まった本である。

 
山あり谷あり

「人生に大切な10個があるとしたら、お金なんか最下位のほうですよ」と、B&Bとして漫才ブームを点火させた張本人は言う。ブームの中で頂点を極めた著者は、お金を使うこともなく体を壊して、そしてブームが終わり暇になった。佐賀に帰って、ばあちゃんに「人生って山あり谷ありなんだね」と言うと、「本当の意味がわかってない」とばあちゃんは返した。


「頂上というとこは記念写真撮ったら降りてこい。頂上は住むところじゃない。あんなとこにおったら気が変になる。降りてきて、もう一回体を洗え。みんな谷におるのが普通や。谷の気持ちが分からんヤツが頂上行って何すんねん」


体を洗って、また新たな山にチャレンジする。ばあちゃんは、あたりまえのことを言った。頂上にいるのが偉いわけでもなく、谷にいるのが恥ずかしいわけでもない。山あり谷ありの人生を、普通に歩いていくのが大切なのだ。

 
貧乏ごっこ

売れない芸人生活の7年間、「貧乏ごっこしてると思え、苦労は幸せになるまでの準備体操」というばあちゃんのことばを支えに、著者は耐えた。


貧乏続きの6年目のある日、著者は妻から「芸人を辞めて」と言われた。子供が生まれたが、仕事もなく四畳半の部屋でただじっとしているだけの著者を見て、妻は泣いた。そのとき、ばあちゃんのことば「貧乏ごっこしてると思え、これは準備体操や」と言った。「あんた、うまいこと言うねぇ」と、妻は笑顔を見せてくれた。


その一年後、妻は「貧乏ごっこ長い! わたし……金持ちごっこしたい」と言った。それから半年後、著者は当時の事務所を辞めて、東京に進出して、漫才ブームを作りあげた。


生活が苦しいというような、どんな苦労も、「ごっこ」なら気持ちが明るくなれる。そうして過ごしているうちに運は好転することを、ばあちゃんは知っていた。同じ時を過ごすのなら、苦労を思わずに明るくという信念を、ばあちゃんはずっと実行していたのだろう。

 
胸を張って
歩け

勉強が苦手だった著者の小学校の成績表は、1、2、1、2、マラソンの掛け声だったという。そんな通知表をばあちゃんに見せると、「大丈夫、0がない。1でも2でも足したら5になる。人生は総合力や」と、どこまでも明るい。漢字が苦手だと言えば、「答案用紙に書いとけ、“僕はカタカナとひらがなで生きてゆきます”と」と返してくる。


「勉強ばかりしてるとアホになる」「人間ちゅうのは頭がええ人も必要やし、アホも必要。必要じゃない人なんていない」ひとつの価値を決して押し付けることがなかったばあちゃんは、著者の、子供の、一番の味方だった。幸せは人から決められた価値ではないことを教え続けていた。


 
天国で
ばあちゃんと
会えたら

「聖徳太子も死んだし、徳川家康も死んだ。うちのじいちゃんも死んだばい。そして私もいつか死ぬ。それまでは一生懸命や」


掃除婦だったばあちゃんは、毎朝四時に起きて、雨の日も風の日も仕事に行き、少しぐらいの風邪では休むことはなかった。


「人生は死ぬまでの暇つぶしやから。暇つぶしには仕事が一番ええ」


ばあちゃんのことばを大切にする著者の夢は、「働き続けること」である。あと二年もすれば、また仕事がなくなるかもしれない、売れなくなるかもしれない。そんな厳しい芸人の世界の中で、常に自分の芸を磨いて前を向いて歩いていくことを、著者はばあちゃんから教えてもらった。


90歳で人生のゴールを迎えたばあちゃんは、「ばあちゃん教にハマって、予想通りの人生やな」と、今の著者を見て笑うだろう。うつになり、自殺まで考えた著者が、こうして明るくばあちゃんを語ることができるのも、ばあちゃんの教えに支えられてきたからだ。


その教えは、明るく、簡単で、たくましいものだった。ばあちゃん教にハマる人は、今年も増えるかもしれない。ハマった人は、いつか、ばあちゃんと会える日まで、明るくたくましく過ごすことができるかもしれない。


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