ホテルマンの研修を年に数件、お引き受けしています。
研修は、お客様のため、顧客満足を高めるために実施するのですから、研修に使う事例は、実際にお客様が感じた対応についてのものが、一番効果的です。
お客様としての私が感じた、忘れられない「感動サービス」の事例をご紹介します。
オープンしたばかりの一流ホテルに友人と食事に行ったところ、日曜日ということもあって、ホテルのレストランはどこも満員でした。予約をしていない私達が悪いのですが、それでも、なんとか食事をしたいと思い、レストランの担当者にお願いしたり、コンシェルジェにも頼んでみたのですが、すべて「NO」、その断り方は、誰も大変慇懃無礼なものでした。食事をして駐車券をタダにしようとした目論見は外れ、結局外に出ることになりました。
駐車場で係りのおじさんに、「レストランがどこもいっぱいで、食事が出来なかったので、駐車券をもらえなかったよ」と愚痴を言ったら、おじさんはブースから飛んで出てきて、「申し訳ございませんでした」と、頭を車につけるようにして丁寧にお辞儀をし、真剣に謝ってくれたのです。「おじさんのせいではないので、気にしないで」と言ったのですが、ブースに戻って宿泊の駐車券を持ってきて、「本日はこちらで結構です」と代金を取らないので、「そんなつもりで言ったのではないわ」とやんわり断ったのですが、それからが素晴らしかったのです。
「お客様、本日はオープンしたばかりの日曜日で大変混雑していますが、平日は空いておりますので、また是非お運びいただいてレストランをご利用ください」と、頭をさげながら、またまた真剣に言ってくれたのです。
レストランのホテルマン、コンシェルジェは一人として、心からの応対をしてくれた人はいませんでした。このような日に予約もなしに来るほうが悪い、と言わんばかりの慇懃無礼そのものの横柄な対応でした。私と友人は、オープンしたばかりのそのホテルも、そのホテルに勤めているすべてのスタッフも嫌いになりかけていたときに、暗い駐車場の片隅で制服も着ていない、“係りのおじさん”から本物のサービスを受けて感動しました。
マニュアルに書いてあったわけでもなければ、このようにしてくれと、言われたわけでもないでしょう。自分で感じたことをそのまま口に出して、目の前にいるお客様のためにできる最善のことをしてくれたのです。嫌いになりかけていたホテルでしたが「また来るわね!」とおじさんに約束しました。深々とお辞儀をしながら見送ってくれた駐車場のおじさんの真剣な表情を今もよく覚えています。残念ながら、その後“おじさん”にお目にかかることは出来ませんでしたが、そのホテルに入るたびに思い出します。私の研修のエッセンスとして、研修最後に入れる事例です。このように感動サービスは一生忘れられないものです。
研修講師は、自分自身が「グッドサービス」と「バッドサービス」をどれだけ体感したかによって、講師としての幅がでてくるのだと思っています。ところが、バッドサービスにあうことが多いため、グッドサービスの事例『ポスト駐車場のおじさん』を、切実に探し求めているこのごろです。
Cross Pointスタッフ Y.T. |