「4月の新人研修の講師を担当しないか」と、昨日までアシスタントだった私に、メインの講師として声がかかりました。引き受けたからには、失敗してはいけない、がんばらなくてはと、何日もかけてレッスンプランをねり、研修を想定してシミュレーションを繰り返し、緊張して研修初日を迎えました。
新社会人を前に、接遇研修の講師デビューです。
心臓がバクバクしている私は、その不安な気持ちと自信のなさを受講者に悟られまいとして、必死に声を出し強引に自分のシナリオを進めたのです。しかし、頑張るほど一方的になり受講者との距離がどんどん離れていくのをはっきりと感じるのに、どうすることもできません・・・。過ぎていく時間の中で、頭の中はパニックに!そのうえ事前にあれほど練習した板書の字までも忘れてしまい、手が止まりボードに向かったまま立ち尽くす状態。
重苦しい雰囲気の中、沈黙していた受講者から口々に漢字を教えてくれる声が聞こえました。私は冷や汗をかきましたが、そのみんなのやさしさに援けられたのです。振り向いて、照れ笑いをしながら「ありがとう」を伝えました。すると、それまで受講生との間にあった垣根が急に低くなり、そう!薄氷が溶けるように、私と受講生の距離がすぅっと縮まるのをしっかりと感じたのです。
接遇研修の講師というと、言葉遣いから立ち居振る舞いまでしっかり身についていて隙がないという印象があります。それまで、私が進めようとしていた「一部の隙もなく、押しとおそうとする研修」は、受講者からすれば「先生にはできるかもしれないけれど、自分たちには到底ムリ」と、講義を聞く気を萎えさせる結果になっていました。
しかし“講師のスキ”を見たことで、「あぁ、この先生も自分達と一緒なんだ」という思いが互いの距離を近づけ、それ以降の話を受け入れてくれたのでした。
接遇教育の内容に関していえば、知識レベルのことは本を読んだり話を聞くことで大体の準備はできるのですが、その知識を研修の場でいかに受講者に伝え、「仕事の場で活かせるよう身につけられるか」は講師の手腕にかかっています。自分では完璧に準備を整えていても、いつもその通りに進むとはかぎりません。いえ、うまく進む方が少ないほどです。
研修のねらい、全体プランは変えないように、研修会場で受講生の顔を見て微調整しながら進めなければ、受講生には受け入れられない、意味のない研修になってしまいます。
研修は生き物のように、いつも違うのです、だから恐い、だからこそおもしろい仕事です。
毎年、新社会人が入社する頃になると、初めて講師として「接遇研修」を担当したときのことを思い出します。そのとき感じた思いを今も大切に研修講師をしています。
Cross Pointスタッフ T.H. |