知りたい!プロの仕事 

〜 客室乗務員 〜
『クレームに向き合う姿勢』


国内航空会社での乗務員時代の経験をご紹介します。
乗務中は、「ありがとう」の言葉をたくさん頂戴して幸せな気持ちになることもあれば、お叱りを受けたりして、お客様から多くのことを教えていただきました。

パーサーになって間もない頃のこと、ある乗務員がお客様にお叱りを受け、機内の責任者としてお詫びにお席に伺ったときのことです。
お怒りの内容は、予約の段階からの一連の対応不備についてのもので、我慢に我慢を重ねやっと乗り込んだ機内で、先の乗務員の対応をきっかけに爆発したのでした。

「もういいっ!責任者を呼べ!!」大声のする方を見ると、今にも泣き出しそうな後輩と怒りに紅潮したお客様。周囲のお客様の不安そうなお顔も見えます。
絶対に何とかしなければ・・・ 思えば、この瞬間にすでに冷静さを失い、大切なことが見えなくなっていたのだと思います。

お客様の座席へと急ぎながら、苦情対応の流れを頭の中で繰り返していました。
(まず、お話は最後まで聞く。そうだ、メモを取りながら聞かなくては、それから・・・)
お席では、お客様に責任者であることを名乗り、ご不快な思いへのお詫びと内容を詳しくお教えいただきたい旨を申しあげました。
予約時に聞いた内容と空港ゲートでの説明が異なり、十分な説明もなく〜と、単純なお話ではなく、様々な部署が関係するものとわかり、聞き落として再度たずねるようなことがあってはならないと、必死にメモを取っていたその時、お客様が私のメモボードを取り上げ通路に叩きつけたのです。

驚くと同時に「しまった!!」と気付きました。私は完全に自分の視点、つまり「トラブルを解決する」意識で対応していて、お客様の気持ちをきちんと聴くことができていませんでした。
お顔を見ながら伺っていたつもりですが、書くことに気を取られ、そのメモボードは完全にお客様に裏側を向けた状態で、何を書いているのかわからず不安を与える姿勢になっていました。また気づいたことは、メモを取ることの許可もいただかないまま記録を始めてしまっていたのでした。いきなりメモを取り始め、しかも「何を書いているのか、何のために書いているのかもわからない。」のでは、お客様の怒りが倍増するのは当然のことでした。

マニュアル通りの「○○しなければ」という役割意識が先行し、お客様の気持ちを聴くことをしない、お客様からの視点をも持たないお粗末な対応でした。すぐに重ねてお詫びをし、その後の取り組みを必ずご報告することでご納得いただけましたが、自分が新たな怒りを引き起こしてしまったことが、とても申し訳なく、情けない思いでいっぱいでした。

「お客様の気持ちを受けとめる(怒りの感情に向き合う)こと」の大切さを痛感し、同時に「わかっている」と「できる」ことは全く違うことを身にしみて感じ、怒りに向きあう覚悟もこのときに学んだのでした。
そして、すべては、「お客様の信頼を取り戻すため」であり、その後のお客様対応を支える「自分自身の中の柱ができた」、思い出のフライトになりました。

                                         Cross Pointスタッフ Y.W.



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